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注目の研究!ゴトオビの仲値トレードが有効な通貨ペア・エントリー時間は?

2022年05月24日 公開 
2022年10月27日 更新

為替相場におけるアノマリーを利用した有名な手法に、ゴトオビの仲値を狙ったトレードがあります。

この手法を実践したことがある個人トレーダーも少なくないでしょう。

実はこのゴトオビの仲値トレードについて、茨城大学大学院の鈴木研究室で本格的な研究が行われ、「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係」という論文が発表されていました。

この研究では、ゴトオビの仲値トレードに関して統計的に検証するともに、有効な通貨ペアやエントリー時間について深い分析を行っています。

経験則からこの手法を実践している多くの個人トレーダーにとって、実戦にも生かしやすく学びの多い貴重な研究と言えるでしょう。

今回は、この研究の概要を簡潔に解説していくので、ぜひチェックしていただければと思います。

▼論文
国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係

ゴトオビの仲値トレードとは?

まず初めに、ゴトオビの仲値トレードについて確認しておきましょう。

ゴトオビは5と10が付く日を指しており、具体的には毎月の5日・10日・15日・20日・25日・30日のことです。

また仲値とは、日本の金融機関が顧客と外国為替取引を行う際に基準となるレートのことで、毎営業日の午前10時頃(正確には9時55分)のレートを参考に決められます。

特にゴトオビの仲値が決まる時間に向けては、米ドル/円が上昇しやすいと言われています。

このアノマリーを利用して、あらかじめ米ドル/円のロングポジションを作っておいて、時間が来たら決済をするというのが、ゴトオビの仲値トレードです。

こういった現象が起こるのは、支払いをゴトオビに行うという日本独特の商習慣が背景にあると考えられています。

なぜなら、日本の輸入企業による外国企業に対する支払いもゴトオビに集中しやすくなるからです。

この支払いは、手持ちの円を支払いで使用する通貨に換えて行われます。

そのため、ゴトオビの仲値が決まる時間にかけて、支払いに使われることの多い米ドルが買われ、円が売られることになるというわけです。

アノマリーを統計的に検証

国内輸入における貿易通貨比率

引用元:国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(図1)

上の画像は、国内輸入における支払いに使用される通貨の割合を時系列で示したものですが、大部分を米ドルが占め、続いて円、ユーロと多いのが分かります。

ゴトオビの仲値トレードの背景を踏まえると、国内輸入において多く使用される通貨において、より明確な動きが起こりやすいはずです。

これを踏まえて、「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係」の研究では、国内輸入における貿易通貨比率が高い通貨に注目し、米ドル/円・ユーロ/円・ユーロ/米ドルについての検証が行われました。

具体的な検証方法は、対象となる通貨ペアについて、仲値が確定する午前10時の買値と、その1~20時間前の買値を比較する形です。

対象通貨ペアのトレンドに差が出ないように選択された対象期間にわたって、以下の4つに分類して上昇確率を調査し、差が出るのか検証します。

  • 通常日
  • 金曜日
  • ゴトオビ
  • 金曜日かつゴトオビ

なお、ゴトオビが休日となる場合は、前営業日をゴトオビとみなしています。

また、ゴトオビ以外に金曜日という切り口からも分類していますが、これは支払いが集中しやすいという意味では週末前の金曜日も該当すると考えられるのが理由です。

米ドル/円で最も明確な上昇を確認

では、この検証結果を通貨ペアごとに見ていきましょう。

米ドル/円の上昇確率

引用元:「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(表4)」から抜粋

上の画像は、米ドル/円の検証結果です。

これを見てみると、通常日は全ての比較時間についてほぼ上昇確率が50%ですが、金曜日・ゴトオビにおいては確率が高くなっているのが分かります。

特に金曜日かつゴトオビにおいては、上昇確率がより高くなっている形です。

また、統計的な分析を行った結果、通常日に比べて金曜日・ゴトオビに上昇する傾向があることも確認されました。

ユーロ/円の上昇確率

引用元:「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(表5)」から抜粋

上の画像は、ユーロ/円の検証結果です。

こちらも米ドル/円の場合と同じような傾向が見て取れますが、上昇確率が高まる幅が米ドル/円よりも小さいところがあります。

この理由は、国内輸入において使用される通貨としてユーロは米ドルよりも少ないことにあると考えられる、ということです。

ユーロ/米ドルの上昇確率

引用元:「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(表6)」から抜粋

上の画像は、ユーロ/米ドルの検証結果です。

こちらについては、通常日に比べて金曜日・ゴトオビにおける上昇確率が低くなっている傾向が読み取れます。

つまり、ユーロ/米ドルはゴトオビにかけて下落する傾向があるということです。

こちらについても、国内輸入の支払いにおいてユーロよりも米ドルの需要が大きいことを踏まえると、腑に落ちる結果と言えるでしょう。

仲値トレードのシミュレーション

「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係」の研究では、ゴトオビの仲値トレードについて、より実戦的な研究も行っています。

具体的には、スプレッド(買値と売値の差)も考慮した上で、仲値が決定する午前10時の1~20時間前にエントリーして午前10時でエグジットするトレードを繰り返す(取引量は一定)という検証です。

これによって、仲値トレードでどれぐらいの利益が出せるか、より望ましいエントリータイミングは何時間前かを分析することができます。

個人トレーダーが生かしやすい部分なので、さっそく結果を見ていきましょう。

早いエントリーほどリターンが大きい

(Ⅰ)通常日・(Ⅱ)金曜日・(Ⅲ)ゴトオビ・(Ⅳ)金曜日かつゴトオビの場合について、1~10時間前にエントリーする仲値トレードを繰り返した場合、それぞれ利益(累和リターン)がどう推移する結果となったか見ていきましょう。

米ドル/円の累和リターン推移

引用元:国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(図3)

上の画像は、米ドル/円の結果です。

(Ⅰ)のグラフは右肩下がりとなっていますが、(Ⅱ)~(Ⅳ)のグラフはきれいな右肩上がりです。

金曜日やゴトオビに仲値トレードを行うと、スプレッド分も取り返して着実に利益を積み上げられることが分かります。

エントリー時間に注目して見ると、タイミングが早いほど資産が増えるペースが速くなっており、大きな利益を出せる傾向にあると言えそうです。

ユーロ/円の累和リターン推移

引用元:国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(図4)

上の画像は、ユーロ/円の結果です。

こちらも米ドル/円と似たような結果ですが、スプレッド負担もあってか資産が減るケースもある形となっています。

これを見てみると、仲値トレードの有効性では米ドル/円の方が勝っているという印象を持つ人が多いのではないでしょうか。

ユーロ/米ドルの累和リターン推移

引用元:国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(図5)

上の画像は、ユーロ/米ドルの結果です。(米ドル/円・ユーロ/円とは異なり、売りポジションを持つトレードです。)

こちらも仲値トレードは一定程度有効ではあるものの、効果はやや落ちているようにも見えます。

本研究においても、仲値トレードによる利益の大きさは「米ドル/円>ユーロ/円>ユーロ/米ドル」の順としており、国内輸入に使われる通貨比を踏まえると納得できる結果と考察されていました。

エントリータイミングに関しては、米ドル/円の結果を見ると分かりやすいですが、早い方が良いというようにも見えます。

ただし、これについてはエントリーが早いとトレードが失敗に終わった際の損失幅も大きくリスクが増すことに注目し、さらに別の角度からの分析が行われています。

効率性の高いエントリータイミングは?

トレードの良し悪しを評価するための指標として代表的なのが、以下の3つの指標です。

指標名計算式
プロフィットファクター総利益 ÷ 総損失
ペイオフレシオ勝ちトレードの平均利益 ÷ 負けトレードの平均損失
勝率勝ちトレード数 ÷ 総トレード数

上記の指標を使って、仲値トレードのシミュレーション結果についてエントリー時間ごとに分析が行われました。

なお、上記の各指標の詳細な見方については、以下の記事でご確認ください。

では、エントリー時間ごとのトレード結果指標をまとめたグラフを見ていきましょう。

なお、青色の棒グラフがプロフィットファクター、黄色の棒グラフがペイオフレシオ、赤色の折れ線グラフが勝率を示しています。

米ドル/円のトレード結果指標

引用元:国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(図6)

上の画像は、米ドル/円のものです。

プロフィットファクターに注目して見ると、エントリーが仲値確定の直前だと低く、エントリーが早くなるにつれて徐々に上昇しています。

ただし、エントリーが早いほど良いわけではなく、途中でピークを迎えて頭落ちになっていく形です。

本研究の考察では、プロフィットファクターが最も良くなるのは6時間前頃と示しています。

つまり、シミュレーションではエントリー時間が早いほうが利益が大きくなるという結果になっていましたが、トレードの内容としてはエントリー時間が早ければいいわけではないということです。

ユーロ/円のトレード結果指標

引用元:国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(図7)

上の画像は、ユーロ/円のものです。

こちらも似たような結果となっており、本研究の考察ではプロフィットファクターがピークを迎えるのは9時間頃前と示されています。

ユーロ/米ドルのトレード結果指標

引用元:国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係(図8)

上の画像は、米ドル/円のものです。

こちらも同様ですが、本研究の考察ではプロフィットファクターのピークは4時間前頃としています。

以上を踏まえると、リスクも踏まえて効率良い仲値トレードをするために望ましいエントリータイミングは、仲値が決まる4~9時間前頃が目安となると考えられます。

これより早くなると、仲値以外の要因による影響が大きくなり、仲値をめぐるアノマリーによるプラス要素よりも不確実性によるマイナス要素が高まると考えられる、ということです。

まとめ:統計的に確認されたアノマリーを有効活用しよう!

今回は、ゴトオビの仲値トレードを検証した「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係」という論文について、概要を簡単に紹介しました。

この研究はゴトオビの仲値トレードに関するアノマリーを統計的に確認したもので、個人トレーダーも押さえておきたい内容と言えるでしょう。

もちろんですが、あくまでそういう傾向があるということであり、毎回この手法が成功するということではありません。

チャートにおいて逆行するトレンドが発生していれば、この手法が機能しないことも十分に考えられるでしょう。

とはいえ、こういった特定の時間帯に現れる相場の力は、トレードにおいて有効活用できるはずです。

普段行っているテクニカル分析とこのアノマリーをうまく組み合わせて、トレード判断の精度を高めていただければと思います。

茨城大学の鈴木研究室では、今回紹介したもの以外にもトレードに関する研究が数多く行われています。

個人トレーダーにとって貴重な情報を得られることもあると思いますので、興味のある人はどんな研究が行われているかチェックしてみてくださいね。

▼「国内輸入に伴う貿易通貨比率とゴトオビアノマリーの関係」の著者である鈴木教授の研究室はこちら!
茨城大学 鈴木研究室

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