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相場予測モデルの研究!相場の隠された法則は見つかるのか?

2022年05月27日 公開 
2023年01月30日 更新

近年、相場予測に関するAIの研究が進んでおり、ロボアドバイザーといった自動運用の商品も実用化されてきています。

この点、裁量トレードを行う個人トレーダーにとって、AIが相場に与える影響は気になるところがあるのではないでしょうか。

今回紹介するのは、慶應義塾大学で行われていた、「ティック・データによる市場価格の短中期予想」という機械学習による相場予測に関する研究です。

これは「挑戦的萌芽研究」という初期段階の研究ですが、AIによる予測がどういうものかイメージを持つ参考にしていただければと思います。

▼研究
ティック・データによる市場価格の短中期予測

短中期の相場予測の高精度化を目指す研究

本研究の狙いは、相場の短中期(分から時間のレベル)を予測するモデルを高精度化することとされています。

ただし、研究開始当初の葉池として、そういったモデルは短期的に精度を高めることは可能でも、長期間にわたって高い精度を維持するのが難しいところがあったようです。

この点、長期間にわたって短中期の予測ができるモデルがあると推測した上で、本研究ではそのモデルを探すということを目指しています。

また、短い期間の予測可能性を研究するために、分足レベルだけでなくティックレベルでの変動まで対象としているのが特徴です。

非常に大まかに言ってしまうと、短い相場変動の中に隠されている法則を機械学習で探していくというイメージでしょうか。

個人トレーダーがそれを直接活用できるとは限りませんが、そういった法則を見つけることができれば、トレードにおいて間接的に役立つ面があるかもしれません。

研究成果をピックアップして紹介

本研究における成果について、ここでは以下の2つをピックアップして紹介します。

  • 相場の方向性の予測で重要なのは直前の足
  • 値幅分布に関するモデルの構築

では、それぞれ見ていきましょう。

相場の方向性の予測で重要なのは直前の足

本研究では、さまざまな予測モデルを作って、現在の価格(最も有利な買い気配値)とその次の価格の変動を予測するという検証が行われました。

その結果、上昇するか下落するかという部分については、過去の価格に基づいて高い精度で予測できるモデルが見つかっています。

次のグラフを見てください。

相場の上昇・下落の予測正解率

このグラフは、縦軸が予測が正解した確率で、横軸が分析を行った分足となっています。

また、折れ線グラフが6本ありますが、これは予測において過去の足を1~6本使ったものの結果を示しています。

1分足のところでは50%を割っているところもありますが、その他は全て50%を超えている形です。

本研究では、「収益の符号(上昇するか下落するか)は明確に予測可能である」としています。

そして、少し意外にも感じられるのが、グラフを見ると分かるように、正解確率が高くなるのは利用する過去の足の本数が1本のときという点です。

このことも関係してか、予測においては次の足が上昇するか下落するかを予測するに当たっては、直前の足における上昇・下落が最も重視されているとしています。

さらに、その予測値は、直前の足の上昇・下落の逆となることが多いようです。

非常に大雑把に言ってしまうと、上昇した足の次は下落を予測し、その次は上昇を予測するというイメージで、正解率が高くなったというイメージでしょうか。

この性質は、本研究において「収益反転」と表現されています。

面白いのが、この収益反転の性質は幅広い分足において確認されており、フラクタル性(自己相似性)を持っていると考察されている点です。

例えば、60分足で上昇が起こると次の足では下落が起こりやすいわけですが、この60分足はそれぞれ2本の30分足に分けられます。

この30分足においても、「上昇→下落→上昇→下落」というような形になりやすい傾向があるということです。

価格が上昇すれば売りたい人が増えて下落しやすいということで、上昇すれば下落するということは何となくイメージしやすいと思います。

大きな時間軸でも小さな時間軸でも、共通してこういった傾向が見られるということも、併せて頭に入れておくと役立つことがあるかもしれません。

なお、収益反転をローソク足チャートで表現すると、陰線と陽線が入れ替わるということです。

収益反転に関する研究結果を頭に入れながら、以下の記事にあるローソク足分析について学んでみるのも面白いと思います。

値幅分布に関するモデルの構築

本研究は、値幅の確率分布を説明するモデルの構築も行っています。

次のグラフを見てください。

米ドル/円の2001年・2005年・2013年における価格(黒色)とモデルによる回帰(赤色)

このグラフは、上から順に2001年・2005年・2013年の米ドル/円における値幅の確率分布を、実際のデータ(黒色)とモデルによる再現(赤色)で比較したものです。

縦軸が確率密度で、横軸が値幅(単位:銭)となっています。(なお、縦軸は指数表示となっている点にご注意ください。)

見ての通り黒色のラインと赤色のラインはほとんど重なっており、モデルできれいに表現されていることが分かります。

なお、このモデルの特徴は、例えば1分足のモデルをk個用いればk分足を表現できる仕組みになっている点です。

細かい時間軸における一つのモデルだけで大きな時間軸を表現できるということで、相場に隠された法則を知るという意味で非常に意義があるものと言えるでしょう。

ただし、ティックレベルでもこのモデルを使って表現するという目標があったようですが、そこは本研究の中では実現できなかったようです。

そのため、ティックレベルに関しては、別のモデルを作成した形となっていました。

とはいえ、値幅も含めて相場の動きをモデル化するという意味で、大きな意義があったように思われます。

少し難解な内容でしたが、こういったことを繰り返していくことによって、モデルがどんどん精緻化されていって、AIによる運用の実用化が進められているわけです。

まとめ:進化するAIを味方につけよう!

今回は、AIによる相場予測に関する研究を取り上げて、その一部を簡単に紹介してきました。

相場に隠された法則を突き詰めているというところで、興味深いポイントもあったのではないでしょうか。

今後もこういった研究はどんどん進められていって、モデルも精緻化されていくことでしょう。

そうなったとき、個人トレーダーによる裁量トレードが通用しなくなるのではないかという不安を覚える人もいるでしょう。

しかし、これは「個人トレーダー対AI」という構図を前提としているからと考えられます。

AIは確かに私たちにとってブラックボックスの要素が多いですが、あくまでも予測するためのツールです。

つまり、テクニカル分析と同様に、AIは個人トレーダーが使いこなすべきものと言えるかもしれません。

個人トレーダーが使いこなすツールは、時代とともに変化していくわけです。

そういった流れに取り残されないためにも、こういった新しい技術に関する情報にも敏感になっておきたいところです。

最後に、本記事で紹介した研究を行われた慶應義塾大学の櫻井研究室のサイトを紹介しておきます。

2018年度を最後に櫻井教授は退官されており更新は止まっていますが、過去の研究一覧などを見ることが可能です。

▼本研究が行われた研究室のサイト
慶應義塾大学 櫻井研究室(更新停止)

監 修
Runchaテクニカル分析チーム

トレード体験アプリ「Runcha」のテクニカル分析チームが作成と監修をしています。


アドバイザリーボード

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内田 まさみ ラジオNIKKEI
日経CNBCの番組パーソナリティ
経済雑誌多数連載中
山中 康司 金融リテラシー協会 代表理事
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