RSIの期間設定のおすすめ数値は?設定変更の考え方と注意点
公開日:2022年2月18日 更新日:2022年5月13日
テクニカル分析の定番「RSI」とは?

RSIは、上の画像のサブチャートで紫色のラインで表示しているインジケーターです。
テクニカル分析の定番とも言える存在で、多くのトレーダーが使用している有名インジケーターです。
RSIは「Relative Strength Index」の略称で、日本語に直訳すると「相対的力指数」という意味です。
この名前からは、相場の買いと売りの相対的な力のバランスを示した指数と考えるといいでしょう。

RSIの値が示すのは過去の上昇・下落幅の合計における上昇幅の割合で、上の画像の目盛りからも分かりますがRSIは0~100%の範囲で動きます。
チャートが上昇すればRSIも上昇し、チャートが下落すればRSIも下落するというように、チャートに追随する形で動くのが基本です。
RSIからは買われ過ぎや売られ過ぎといった相場の過熱感を読み取るのが、最もオーソドックスな使われ方です。
具体的には、RSIが70~80%を上回ると買われ過ぎ、RSIが20~30%を下回ると売られ過ぎと判断します。
この判断基準には決まりはなく、分析対象や時間足、手法などによって適宜調整するといいでしょう。
なお、より実戦的な使い方については以下の記事で説明しているので、本記事と併せてこちらもチェックしていただければと思います。
RSIの計算式と意味
RSIを算出する計算式は以下の通りです。

RSI=n期間の値上がり幅の平均÷(n期間の値上がり幅の平均+n期間の値下がり幅の平均)×100
※n:パラメータ
この計算式からは、RSIは過去n期間において変化した値幅のうち、上昇した期間の値上がり幅の割合を示していることが分かります。
つまり、値上がり幅が大きく値下がり幅が小さければ、100%を上限にRSIの値は大きくなる形です。
逆に値上がり幅が小さく値下がり幅が大きければ、RSIは0%を下限にRSIの値は小さくなっていきます。
このような形で、RSIは過去のチャートにおける上昇と下落のバランスを示すような仕組みになっています。
なお、RSIの計算式に関するより細かい論点は以下の記事で解説しているので、興味のある人はこちらも読んでみてください。
また、以下の記事ではRSIが持つ意味をより深掘りしています。RSIの本当の意味が気になる人は、こちらもチェックしていただければと思います。
RSIにおける設定値
RSIは、過去のチャートにおける値上がり幅と値下がり幅を使って計算を行っています。
この計算において(主に)どれだけの期間のデータを使うかによってRSIの値は変わり、RSIの動き方にも影響が出てきます。
RSIではこの期間を自由に設定できるようになっており、RSIを使う際に調整することが可能です。
具体的には、これは先ほどの計算式における「n期間」の部分です。
仮に「n期間」を大きくすると、計算対象となるデータが増えて直近の値動きによる影響が薄まり、RSIの動きは緩やかになります。
逆に「n期間」を小さくすると、計算対象となるデータが減って直近の値動きによる影響が濃くなり、RSIは直近の値動きに反応して機敏に動くようになります。
今回の本題はこの設定値の部分です。RSIの設定値についてどう考えればいいか、ここから詳細に見ていきましょう。
基本的におすすめの期間設定は「14」

先に結論を言ってしまうと、基本的にRSIの期間設定でおすすめの値は「14」です。
これは、RSIの開発者であるJ.W.ワイルダー氏がテストを繰り返して結論づけた最適な値であり、多くのトレーダーも採用していることが大きな理由です。
開発者が提唱していることもあってか、期間を「14」に設定したRSIは実際に良いバランスで上下動してくれます。
特にRSIを使い始めたばかりの人は、まずはこの値から使用するのが無難と言えそうです。
ただし、RSIの期間設定を絶対に変えてはいけないということはありません。
実際に、以下のような「14」以外の値を設定しているトレーダーもいるようです。
9、28、50
分析対象や時間足、RSIをどういう目的で使うかなどによって、適切な期間設定は変わってくることも十分に考えられます。
もちろん、なんとなくで「14」以外の設定値に変えるのはおすすめしません。
しかし、丁寧にバックテストをした上でより良いと考えられる期間があるのであれば、それ以外の設定値を使用しても問題はないでしょう。
RSIで設定する期間による影響
RSIの計算式を紹介したところで、期間設定を長くすると動き緩やかになり、期間設定を短くすると動きが鋭くなることを説明しました。
これについて、実際のチャートで確認してみましょう。

上の画像では、期間を9/28/50に設定したRSIをサブチャートに並べて表示しており、その動き方を同じ相場で比較しています。
見ての通り、期間設定9のRSIは上下動が最も激しく、期間設定50のRSIは上下動が最も穏やかです。
期間設定9のRSIは、同じ動きでも高い値あるいは低い値になりやすく、買われ過ぎや売られ過ぎのラインとして設定した70%/30%にすぐ到達しています。
逆に期間設定50のRSIは、相場が動いても値が変化しにくく、相場の行き過ぎの判定ラインに到達したのは1回だけです。
このように、期間設定によってRSIの動き方が変わり、シグナルの出方に影響が出ることが分かります。
なお、この性質を踏まえて判定ライン自体をズラすというのも、RSIを使いこなす上でのテクニックの一つです。
では、実際に期間設定の違いによって、RSIを使ったトレードがどう影響を受けるのか検証していきましょう。
RSIの期間設定の違いによる検証
ここでは、RSIで最もよく知られている、買われ過ぎや売られすぎで逆張りを行う以下の取引手法について検証を行っていきます。
- RSIが70%以上になった後、70%以下になったタイミングで売り
- RSIが30%以下になった後、30%以上になったタイミングで買い
買われ過ぎの判断基準ラインは70%、売られ過ぎの判断基準ラインは30%に設定している形です。
この取引手法については以下の記事で詳細に解説しているので、気になる人はチェックしてみてください。
期間設定9/14/28の3パターンでバックテストを行い、その結果を比較していていきます。
検証に使うのは、上記の売買シグナルに従ってドテン売買を繰り返す「RSIストラテジー」というTradingViewに内蔵されているストラテジーに、利食いラインと損切りライン、テスト期間の設定ができるように修正を加えたものです。
なお、あくまでも限定した期間のテスト結果であり、期間設定の良し悪しを示すものではない点にご留意ください。
トレード結果は、RSIにおける判断基準ライン、トレードにおける利食いラインと損切りラインなどの影響も大きく受けます。
自分にとってより良い期間設定を見つけるためには、自分の取引手法に合わせてさまざまなパターンを細かく検証するようにしましょう。
スイングトレード向け検証(4時間足)
まずは、スイングトレード向けに4時間足を使い、以下のように条件設定の中で検証を行っていきます。
- テスト期間:2021年1月1日~2021年12月31日(エントリー時点)
- 取引対象:ユーロ/米ドル
- 初期資金:100,000円
- 取引量:4,000通貨
- 利食いライン:+100pips(約4,400円)
- 損切りライン:-50pips(約2,200円)
- ピラミッディング:なし
では、期間設定の短い方から9/14/28の順番で結果を見ていきましょう。

上の画像は、期間設定9のときのトレードポイントを示しています。
赤矢印が売りエントリーを、青矢印が買いエントリーを、紫矢印がエグジットを、それぞれ行うタイミングです。
期間設定9における結果は以下のようになりました。
- トレード回数:77回
- 純利益:11,572円(総利益97,169円、総損失85,597円)
- 勝率:40.30%(27勝40敗)
- プロフィットファクター:1.135
- リスクリワードレシオ:1.682
- 平均ポジション保有期間:76時間
単純にRSIを使っただけのシンプルな手法ですが、比較的大きな利益が出ています。
上の画像のサブチャートを見ると分かりますが、よく動く期間設定なので判断基準ラインへの到達回数が多く、トレード機会が多くなっている印象です。

続いて上の画像では、期間設定14のときのトレードポイントを示しています。
期間設定14における結果は以下のようになりました。
- トレード回数:34回
- 純利益:4,066円(総利益52,506円、総損失48,440円)
- 勝率:35.29%(12勝22敗)
- プロフィットファクター:1.084
- リスクリワードレシオ:1.987
- 平均ポジション保有期間:108時間
こちらも利益は出ていますが、プロフィットファクター(総利益÷総損失)が1.1を割ってしまっており、少し心許ない結果と言えるかもしれません。
このテスト期間については、期間設定9の場合よりも成績が低くなった形です。

最後に上の画像では、期間設定28のときのトレードポイントを示しています。
期間設定28における主要なテスト結果は以下のようになりました。
- トレード回数:8回
- 純利益:▲4,584円(総利益8,947円、総損失13,531円)
- 勝率:25.00%(2勝6敗)
- プロフィットファクター:0.661
- リスクリワードレシオ:1.984
- 平均ポジション保有期間:56時間
上の画像のサブチャートを見て通り、こちらはRSIが判断基準ラインに達する回数が少なく、トレード回数がかなり少なくなっています。
また、判断基準ラインに達した後もそのまま伸びるケースが多く、その伸びる局面で連敗が発生しており、トータルで損失となってしまった形です。
ここまでは2021年を対象期間とした結果ですが、2019~2021年の3年間の結果を並べると、以下の表のようになります。
期間 | 期間設定9 | 期間設定14 | 期間設定28 |
2019年 | 41,948円 | 43,629円 | 23,928円 |
2020年 | ▲24,481円 | 450円 | ▲13,095円 |
2021年 | 11,572円 | 4,066円 | ▲4,584円 |
合計 | 29,039円 | 48,145円 | 6,249円 |
3年間の合計で見てみると、期間設定14が最も良い成績となっています。
期間設定9は1年で見ると大きな損失が出ている年もあり、相場が合うかどうかによって成績の波が大きいところがあるのかもしれません。
デイトレ-ド・スキャルピング向けの検証(15分足)
次に、デイトレードやスキャルピング向けに、15分足でも以下のように条件設定をして検証を行っていきましょう。
- 初期資金:100,000円
- 取引量:10,000通貨
- テスト期間:2021年11月1日~2021年11月30日(エントリー時点)
- 利食いライン:+30pips(約3,300円)
- 損切りライン:-15pips(約1,650円)
- ピラミッディング:なし
では、期間設定の短い方から9/14/28の順番で結果を見ていきましょう。

上の画像は、期間設定9のときのトレードポイントを示しています。
期間設定9における主要なテスト結果は以下のようになりました。
- トレード回数:85回
- 純利益:▲19,535円(総利益67,944円、総損失87,479円)
- 勝率:40.91%(33勝52敗)
- プロフィットファクター:0.777
- リスクリワードレシオ:1.224
- 平均ポジション保有期間:5時間
上の画像を見てみても分かる通り、RSIが激しく上下に動いて判断基準ラインをすぐに超えるため、トレード回数が多くなっているのが特徴です。
利食いラインを待たずに反対の売買サインが出ているため利益幅が狭くなり、他のケースと比べてリスクリワードレシオ(勝ちトレードにおける平均利益÷負けトレードにおける平均損失)が極端に小さくなっています。
これが大きな原因で大きな損失が出ていますが、判断基準ラインをより厳しく設定することで損失を抑えられるかもしれません。(ちなみに、80%/20%にすると純利益は▲5,792円になります。)

続いて上の画像では、期間設定14のときのトレードポイントを示しています。
期間設定14における主要なテスト結果は以下のようになりました。
- トレード回数:43回
- 純利益:▲9,242円(総利益42,056円、総損失51,298円)
- 勝率:30.23%(13勝30敗)
- プロフィットファクター:0.820
- リスクリワードレシオ:1.892
- 平均ポジション保有期間:6時間
上の画像を見ての通り下降トレンドが伸びる局面が多く、そこで連敗が多く発生してしまっています。
勝率が低めになっていることが原因で、期間設定9ほど大きくはありませんが損失が出てしまった形です。

最後に上の画像では、期間設定28のときのトレードポイントを示しています。
期間設定28における主要なテスト結果は以下のようになりました。
- トレード回数:12回
- 純利益:▲10,210円(総利益6,871円、総損失17,081円)
- 勝率:16.67%(2勝10敗)
- プロフィットファクター:0.402
- リスクリワードレシオ:2.011
- 平均ポジション保有期間:4時間
こちらも下降トレンドの影響もあってかほとんど勝ちが出ておらず、勝率は極めて低くなっています。
ただ、トレード回数自体が少なく、期間設定9ほどには損失が拡大していません。
ここまでは2021年11月を対象期間とした結果ですが、2021年11月~2022年1月の3ヶ月の結果を並べると、以下の表のようになります。
期間 | 期間設定9 | 期間設定14 | 期間設定28 |
2021年11月 | ▲19,535円 | ▲9,242円 | ▲10,210円 |
2021年12月 | 46,584円 | 19,815円 | 11,974円 |
2022年1月 | 6,055円 | ▲13,677円 | ▲6,881円 |
合計 | 33,104円 | ▲3,104円 | ▲5,117円 |
2021年12月は、全ての期間設定で利益が出ています。年末でレンジ相場が続いたこともあり、RSIを使った逆張りが合った相場だったと言えそうです。
ここで大きな利益が出た期間設定9が、3ヶ月の合計で見てみると一番良い成績になりました。
以上、RSIの逆張り手法に利食いラインと損切りラインを加えただけの非常にシンプルな手法でしたが、期間設定によって成績が大きく異なっており、興味深い結果だったと思います。
ここにRSIに合った相場環境を見極める他の分析手法を加えるなど、もう一工夫加えていくと、成績を安定化させることができるかもしれません。
簡単なバックテストでしたが、自分なりの手法を構築する際の参考にしていただければと思います。
RSIの期間設定に関する注意点
RSIの期間設定は自由に変更することができ、バックテストを丁寧に行うことでより良い設定値を見つけられる可能性があります。
しかし、より効果的な期間設定を探すに当たっては、以下の点に注意が必要です。
- 正解を探そうとし過ぎない
- 過剰最適化(カーブフィッティング)を避ける
では、それぞれのポイントについて説明していきます。
正解を探そうとし過ぎない

RSIを使った取引手法を行う際、RSIの期間設定を変えていけばトレード結果も変わっていきます。
そのため、「期間設定には必ず勝てるような正解の値があるはずだ」と感じるかもしれません。
しかし、相場においては必ず勝てる聖杯のようなものはなく、期間設定の値にもこれが正解という値はありません。
これは期間設定以外にも、取引手法における判断基準ラインや、先ほどの検証における利食いラインや損切りラインの設定の仕方など、取引手法全体に言えることです。
トレードとは勝ったり負けたりを繰り返して、トータルとして利益が出る可能性が高くなるようにするものです。
正解を探そうとし過ぎてしまうと、時間と労力を浪費してしまうことになりかねないので注意しましょう。
過剰最適化(カーブフィッティング)を避ける

RSIの期間設定を変更するに当たっては、バックテストを行うことが欠かせません。
しかし、このバックテストはあくまでも過去の一定期間における結果を教えてくれるものに過ぎず、将来も同じ結果が出ることを保証してくれるわけではない点に注意が必要です。
実はバックテストで良い結果が出るような期間設定は、比較的簡単に見つけることができます。
ただし、それはあくまでもテスト期間における相場に合うような期間設定であり、他の相場において通用するわけではありません。
むしろ特定の相場に過剰に合うように作った取引手法は相場の変化に対応ができないため、将来の相場においては悪い成績となる可能性が高いと考えられます。
これは「過剰最適化(カーブフィッティング)」と呼ばれる、注意しなければならない現象です。
目的は、将来に良い成績が出る可能性が高い取引手法を探すことです。
バックテストで良い結果を出すことに集中し過ぎると逆効果になることもあるという点は、しっかり頭に入れておくようにしましょう。
まとめ:RSIの設定値の特徴を理解しよう!
今回は、RSIの設定値について細かいところまで解説を行ってきました。
RSIは期間設定が変わることで動き方が変わり、その結果、トレードへも影響が出るというイメージが持てるようになったのではないでしょうか。
こういったRSIの期間設定の影響を理解すれば、より高度にRSIを使いこなせるようになるかもしれません。
基本的にはRSIの期間設定は「14」がおすすめですが、自分の手法に合った動き方になるようにチューニングできるという点も、頭に入れておくことをおすすめします。