強制ロスカット|これさえ分かれば怖くない証拠金維持率について
公開日:2021年8月5日 更新日:2022年4月25日

要するに、強制ロスカットとは
- トレーダーとFX会社のリスクを抑えるセーフティシステム
- 強制ロスカットによって、トレーダーの資金がマイナスになる可能性が抑えられる
- 状況によっては、元本以上の損失をする可能性もある
目次
FXにおけるレバレッジの仕組み
強制ロスカットを正確に理解するためには、FXにおけるレバレッジの仕組みを頭に入れておくことが欠かせません。
まずは、FXはそもそもどういった取引なのかというところから説明していきます。
証拠金取引
★画像挿入【alt:FXは「外国為替取引×証拠金取引」】
FX=外国為替取引×証拠金取引というのが分かるイメージ図をお願いします。
FXの正式名称は「外国為替証拠金取引」で、外国為替を対象とした証拠金取引ということになります。
一般的な取引では、購入時にお金を支払って商品を受け取り、売却時にお金を受け取って商品を引き渡します。
これに対して証拠金取引では、最終的に反対売買によって決済することを前提としており、決済時に取引による損益についてのみ、お金のやり取りが行われるようになっています。
また、反対売買が行われることが決まっているため、商品の受け渡しも不要になります。
要するに、取引を行う際には買ったことにするだけで、商品を受け取りません。そして、買ったものは必ず売ることになっていて、売却時には買ったときと売ったときの差額がやりとりされるという形になるわけです。
★画像挿入【alt:証拠金取引の具体例】
以下の例を説明するイメージ図を挿入ください。
この場合に行われるお金のやり取りは、決済時に101万円-100万円=1万円を受け取るだけという形です。
このように、証拠金取引は価格変動による損益分のお金のやり取りで完結するため、取引対象を購入できる資金を用意する必要がありません。
そのため、証拠金取引では、損失発生時に支払いが行えるように所定の金額を担保として預けることで、その金額以上の取引ができるようになっています。
ちなみに、取引において担保として預けるお金のことを「証拠金」と呼びます。この後も何度も出てくるキーワードなので、しっかりと意味を理解しておきましょう。
レバレッジ(leverage)とは、「てこの力」という意味の言葉です。
証拠金取引のように手元の資金以上の売買ができる取引は、レバレッジ取引と呼ばれます。
また、例えば資金の10倍の規模の取引を行うことは、「レバレッジ10倍」といった形で表現されます。
必要証拠金
★画像挿入【alt:必要証拠金とレバレッジ】
※以下の例の通り、米ドル/円が100円のときに1万通貨分の取引をするのには通常100万円必要だけど、FXでは必要証拠金が4万円なので、4万円で取引ができると書く。注意として、「実際に4万円でこの取引をすると、証拠金維持率がすぐに100%を下回ることになるので注意が必要です。」ということを小さく書いておく。
証拠金取引では証拠金を預けることになりますが、取引対象となる商品ごとに預ける必要のある証拠金の金額が設定されています。
この預ける必要のある証拠金のことを「必要証拠金」と言います。必要証拠金がいくらかによって、資金の何倍の取引が行えるのか、レバレッジの上限が決まります。
FXの場合、基本的に必要証拠金は取引金額の1/25に設定されているため、レバレッジの上限が25倍となっているわけです。
例えば、米ドル/円が100円のときであれば、米ドル/円の1万通貨(1万米ドル)の必要証拠金は、普通に取引する際に必要な100万円の1/25となる4万円を基準に設定されるのが一般的です。
仮に必要証拠金を100万円の1/10となる10万円としている場合には、最大でかけられるレバレッジが10倍ということになります。
なお、為替レートが変動すると取引に必要な金額が変わり、これに伴い必要証拠金の金額も変わります。
例えば、米ドル/円が100円のときの1万通貨あたりの必要証拠金は4万円ですが、米ドル/円が101円になれば4万400円に、米ドル/円が110円になれば4万4,000円になります。
このように、為替レートの変動とともに必要証拠金の金額はリアルタイムまたは一定間隔ごとに更新されていくことも、しっかり頭に入れておくようにしましょう。
証拠金維持率と実効レバレッジ
★画像挿入【alt:必要証拠金とレバレッジの大まかな計算式】
以下の計算式を図表化してください。
証拠金維持率=自分の資金/必要証拠金×100
実効レバレッジ=ポジション評価額/自分の資金
「証拠金維持率」が分かれば強制ロスカットを理解できます。
この証拠金維持率は、自分の資金が必要証拠金に対して何%あるかを示した値です。
例えば、「自分の資金=必要証拠金」となるように目いっぱいのポジションを持った場合には、証拠金維持率は100%となります。
ちなみに、このときの取引において実際にかかっているレバレッジ(実効レバレッジ)は、上限いっぱいの25倍です。
★画像挿入【alt:証拠金維持率と実効レバレッジの具体例】
以下の具体例を図表化してください。米ドル/円=100円、米ドル/円=99円の両方を図表化して、含み損が増えたことで証拠金維持率が下がり、実効レバレッジが上がるところまで伝わるようにお願いします。
では、具体例を通して見ていきましょう。諸条件は以下をご覧ください。
- 口座残高:100万円
- 米ドル/円:100円
- 必要証拠金:取引金額の1/25
この状況で10万通貨の買いポジションを持った場合、取引に必要証拠金は10万通貨×100円×1/25=40万円となります。自分の資金は100万円なので、このときは証拠金維持率は100万円÷40万円×100=250%です。
なお、普通に取引する場合に必要なのは10万通貨×100円=1,000万円なので、実効レバレッジは1,000万円÷100万円=10倍となっいます。
その後、米ドル/円が99円になったとするとどうでしょうか。
まず、10万円の含み損が発生するため、これを考慮すると自分の資金が90万円に目減りします。また、取引に必要証拠金は10万通貨×99円×1/25=39万6,000円になります。
以上を踏まえると、このときの証拠金維持率は90万円÷39万6,000円≒227.3%、実効レバレッジは(10万通貨×99円)÷90万円=11倍です。
この通り、含み損が発生したことで証拠金維持率が下がり、実効レバレッジは上がっています。
もしこのまま含み損が拡大し続けると、やがて証拠金維持率は100%に、実効レバレッジは25倍に達することになるでしょう。
証拠金維持率と実効レバレッジは同じ現象を別の角度から見たものであり、お互いに深い関係のある値です。
それぞれの計算式を単純化して書くと、以下のようになります。
★画像挿入【alt:必要証拠金とレバレッジの大まかな計算式】
FXであれば、一般的に「必要証拠金=普通に取引する際に必要な金額×1/25」に設定されることはすでに説明しました。
これを踏まえると、以下のような計算式が成り立ちます。
★画像挿入【alt:証拠金維持率×実効レバレッジ】
このように、FXの場合、基本的には「証拠金維持率×実効レバレッジ=2,500」という関係が成り立つわけです。(必要証拠金の設定によってはズレる可能性もあります。)
★画像挿入【alt:必要証拠金とレバレッジの大まかな計算式】
上で使用しているものと同じ画像を再掲してください。
※上のブロック内の該当箇所に挿入してください。
★画像挿入【alt:証拠金維持率×実効レバレッジ】
以下の計算式を図表化してください。
証拠金維持率×実効レバレッジ
={自分の資金÷(普通に取引する際に必要な金額×1/25)×100}×(普通に取引する際に必要な金額÷自分の資金)
=2,500
※上のブロック内の該当箇所に挿入してください。
用語の整理
FXのレバレッジの仕組みをできるだけ簡易な表現で説明してきましたが、もう少し難しい用語が使用されることもあります。
最後に、こういった用語を表にまとめて整理しておきます。
ちなみに、ここまでは大まかに「自分の資金」と表現していたものは、以下の表における「有効証拠金」に当たります。この点に気を付けて、以下の表はご確認ください。
現状、FX会社によって使用されている用語が微妙に異なっています。仕組みを理解していれば文脈から読み取れると思いますが、各FX会社の用語が何を指しているのか勘違いしないように気を付けましょう。
用語 | 意味 |
預託金残高 | 取引口座に入金されてる金額 |
必要証拠金(取引必要証拠金、ポジション必要証拠金) | 取引中のポジションに必要となる必要証拠金 |
含み損益(損益評価額) | 保有しているポジションに発生している含み損益 |
有効証拠金(資産評価額、資産合計、時価評価総額) | 証拠金として有効に使えるとみなされる金額。預託金残高+含み損益-出金依頼額 |
証拠金維持率 | 有効証拠金÷必要証拠金×100(%) |
実効レバレッジ | (通貨量×為替レート)÷有効証拠金(倍) |
強制ロスカットを基本から理解
★画像挿入【alt:強制ロスカット】
相場の暴落によって資金がマイナスになる前に、強制的に決済させるのが強制ロスカットだということが分かるイメージ図をお願いします。
レバレッジをかけた取引を行うと、レバレッジをかけた分だけ大きな利益や損失が発生することになります。
そのため、高い実効レバレッジでの取引を行うと、大きな損失が発生して資金がマイナスになってしまう可能性があり、トレーダーは非常に高いリスクを負うことになるわけです。
また、トレーダーがマイナスとなった資金を支払えなくなった場合には証券会社の損失となるため、証券会社にとってもこのリスクは無視することができません。
こういったリスクをカバーするためのセキュリティシステムとして、含み損が大きくなった場合には、取り返しがつかなくなる前に強制的にポジションを決済するロスカットの仕組みが取り入れられています。
ロスカットの仕組みは2パターン
ロスカットには、以下の2種類があります。
- 追加証拠金
- 強制ロスカット
上記のうち追加証拠金を採用していないFX会社もあるため、パターンとしては「追加証拠金+強制ロスカット」「強制ロスカットのみ」の2つです。
では、それぞれの仕組みを見ていきましょう。
追加証拠金
★画像【alt:追加証拠金のイメージ】
追加証拠金は、証拠金維持率が100%を下回ったときに、100%に戻すようにさせようとする制度であることを説明する。期限までに戻らなかった場合には、強制ロスカットになるところまで伝わるようにお願いします。
追加証拠金は、通称「追証(おいしょう)」とも呼ばれます。
この追加証拠金とは、含み損の拡大により証拠金維持率が100%を下回っていた場合に、証拠金維持率が100%を回復するために追加する必要のある証拠金のことです。
ちなみに、証拠金維持率が100%というのは、実効レバレッジが上限の25倍となっている状態です。また、有効証拠金と必要証拠金がイコールの状態とも言えます。
そのため、この状態は最低限維持させようとするのが、追加証拠金の制度というわけです。
追加証拠金を0円にする方法には、以下の2つがあります。(組み合わせて実行してもかまいません。)
- 追加の入金や、出金依頼の取り消しを行う
- ポジションを決済して、必要証拠金を下げる
なお、追加証拠金が発生した場合、解消するための猶予期間が設けられています。
しかし、所定の期限までに追加証拠金を解消できなければ、保有しているポジションが強制的に決済されることになります。
強制ロスカット
★画像【alt:強制ロスカットのイメージ】
強制ロスカットは、証拠金維持率が所定の値を下回ったら、即座に強制ロスカットされる仕組みであることが伝わるようにお願いします。
強制ロスカットでは、所定の証拠金維持率を下回った場合に、その時点で保有しているポジションを強制的に決済します。
基準となる証拠金維持率は100%以下に設定されますが、水準自体はFX会社それぞれです。(FX会社によっては、一定範囲内でトレーダー自身が調整できることもあります。)
追加証拠金では解消のために猶予期間が設けられていますが、強制ロスカットはすぐに執行されるため、条件を満たしてしまった場合には決済を回避することができないのが特徴です。
各社のロスカットルールの比較
では、主要なFX会社のロスカットルールを比較してみましょう。
FX会社 | 追加証拠金 | 強制ロスカット |
DMM FX | 証拠金維持率100%未満 【判定タイミング】 毎営業日クローズ時点 【解消期限】 翌営業日の4時59分まで | 証拠金維持率50%以下 |
GMOクリック証券(FXネオ) | 証拠金維持率100%未満 【判定タイミング】 NYクローズ時点 【解消期限】 翌営業日の3時00分まで | 証拠金維持率50%未満 |
外為オンライン(L25R、L25R miniコース) | なし | 【随時】 証拠金維持率20%未満 【1日1回】 証拠金維持率100%未満 ※「証拠金判定」と呼ばれている。 |
外為オンライン(L25、L25 miniコース) | なし | 証拠金維持率100%未満 |
LINE FX | なし | 証拠金維持率100%未満 |
SBI FXトレード | 証拠金維持率100%未満 【判定タイミング】 毎営業日ロールオーバー時点 【解消期限】 翌営業日の取引終了30分前 ※「レバレッジ判定」と呼ばれている。 | 証拠金維持率50%未満 |
(※)この表は、2021年7月末時点の情報です。
追加証拠金と強制ロスカットを比較すると、猶予期間がない分、強制ロスカットの方が強い制度と言えます。
そのため、強制ロスカットが証拠金維持率100%未満で発動する場合には、それよりも弱い追加証拠金の制度はなしとなっている形です。
FX会社によってロスカットルールの条件は異なりますが、証拠金維持率100%を下回った場合には、追加証拠金または強制ロスカットのいずれかの制度が発動するようになっています。
強制的に決済されないように、どのFX会社を利用する場合でも証拠金維持率100%未満とならないようにすることが大切と言えるでしょう。
強制ロスカットのケーススタディ
実際に強制ロスカットがどのような流れで発動していくかについて、見ていきましょう。
条件によっても発動の仕方が変わっていくので、ここでは以下の2つに分けて、それぞれシミュレーションしていきます。
- 強制ロスカットのみ
- 追加証拠金+証拠金維持率
なお、シミュレーションの共通条件は以下の通りです。
- 口座残高:100万円
- 米ドル/円:100円
- 買いポジションで取引スタート
- 取引数量:20万通貨/10万通貨/2万通貨
取引口座には100万円があり、米ドル/円が100円のときに買いポジションを持ってスタートするものとします。
この場合、20万通貨のときは実効レバレッジ20倍、10万通貨のときは実効レバレッジ10倍、2万通貨のときは実効レバレッジ10倍で取引をスタートする形になります。
その他、必要証拠金はリアルタイムで更新され、為替レートは0.001円刻みで動き、スプレッドやスワップポイントは考慮しないものとします。
強制ロスカットのみ
まずは、シンプルに強制ロスカットのみのケースを見ていきましょう。
なお、強制ロスカットの発動条件は証拠金維持率100%未満とします。
では、実効レバレッジ別に、それぞれシミュレーションしていきましょう。
実効レバレッジ20倍
★画像挿入【alt:実効レバレッジ20倍のときのロスカットライン】
以下の例を説明する図表をお願いします。
取引口座には100万円があり、米ドル/円が100円のときに20万通貨の買いポジションを保有してスタートします。
このときの必要証拠金は20万米ドル×100円×1/25=80万円です。
取引口座には100万円あって必要証拠金は80万円なので、証拠金維持率は100万円÷80万円=125%という状態です。金額で見てみると、証拠金維持率100%までは20万円分の余裕がありますね。
また、20万通貨のポジションということは、米ドル/円が1円下落すると20万円の含み損が発生していきます。
取引スタート後、米ドル/円が下落し続けたとすると、証拠金維持率が100%未満となるのは米ドル/円が98.958円まで下落したときで、このタイミングでの含み損は20万8,400円です。
このポジションが強制的に決済されて損失が確定するので、強制ロスカットが執行された後の取引口座の金額は79万1,600円となります。
ちなみに、強制ロスカットされるのが含み損が20万円のときではなく20万円8,400円なのは、米ドル/円の下落とともに必要証拠金も下がるからです。
これにより、米ドル/円がもう少し進行したタイミングでの強制ロスカットとなり、損失が20万円より大きくなっています。
実効レバレッジ10倍
★画像挿入【alt:実効レバレッジ10倍のときのロスカットライン】
以下の例を説明する図表をお願いします。
取引口座には100万円があり、米ドル/円が100円のときに10万通貨の買いポジションを保有してスタートします。
取引スタート時点の必要証拠金は40万円で、米ドル/円が1円下落すると10万円の含み損が発生していく状況です。
取引スタート後、米ドル/円が下落し続けたとすると、証拠金維持率が100%未満となるのは米ドル/円が93.749円まで下落したときで、このタイミングでの含み損は62万5,100円です。
このポジションが強制的に決済されて損失が確定するので、強制ロスカットが執行された後の取引口座の金額は37万4,900円となります。
実効レバレッジ2倍
★画像挿入【alt:実効レバレッジ2倍のときのロスカットライン】
以下の例を説明する図表をお願いします。
取引口座には100万円があり、米ドル/円が100円のときに2万通貨の買いポジションを保有してスタートします。
取引スタート時点の必要証拠金は8万円で、米ドル/円が1円下落すると2万円の含み損が発生していく状況です。
取引スタート後、米ドル/円が下落し続けたとすると、証拠金維持率が100%未満となるのは米ドル/円が52.083円まで下落したときです。
少し現実味の薄い下落幅ですが、仮にこれだけの下落が起こったとすると、このタイミングでの含み損は95万8,340円ということになります。
このポジションが強制的に決済されたと場合、強制ロスカットが執行された後の取引口座の金額は4万1,660円となります。
追加証拠金+強制ロスカット
続いて、強制ロスカットに加えて追加証拠金もある場合です。
なお、追加証拠金の判定時間は毎営業日のクローズ時点、解消期限は翌営業日のクローズ時点とします。
また、強制ロスカットの発動条件は50%とします。
実効レバレッジ20倍
★画像挿入【alt:実効レバレッジ20倍のときの追証発生ラインとロスカットライン】
以下の例を説明する図表をお願いします。
取引口座には100万円があり、米ドル/円が100円のときに20万通貨の買いポジションを保有してスタートします。
この取引で証拠金維持率が100%未満となるのは、米ドル/円が98.958円まで下落したときです。
取引がクローズする時点で米ドル/円が98.958円以下になっている場合、追加証拠金が発生します。
これを解消しないまま、翌営業日のクローズ時点を迎えると、翌営業日のクローズ時点の米ドル/円のレートで強制的に決済が行われることになります。
また、翌営業日のクローズ時点を迎えるまでに証拠金維持率が50%未満になれば、その時点で強制ロスカットが執行されます。
証拠金維持率が50%未満となるのは米ドル/円が96.938円まで下落したときで、このタイミングでの含み損は61万2,400円です。
このポジションが強制的に決済されて損失が確定するので、強制ロスカットが執行された後の取引口座の金額は38万7,600円となります。
実効レバレッジ10倍
★画像挿入【alt:実効レバレッジ10倍のときの追証発生ラインとロスカットライン】
以下の例を説明する図表をお願いします。
取引口座には100万円があり、米ドル/円が100円のときに10万通貨の買いポジションを保有してスタートします。
この取引で証拠金維持率が100%未満となるのは、米ドル/円が93.749円まで下落したときです。
これを解消しないまま、翌営業日のクローズ時点を迎えると、翌営業日のクローズ時点の米ドル/円のレートで強制的に決済が行われることになります。
また、翌営業日のクローズ時点を迎えるまでに証拠金維持率が50%未満になれば、その時点で強制ロスカットが執行されます。
証拠金維持率が50%未満となるのは米ドル/円が91.836円まで下落したときで、このタイミングでの含み損は81万6,400円です。
このポジションが強制的に決済されて損失が確定するので、強制ロスカットが執行された後の取引口座の金額は18万3,600円となります。
実効レバレッジ2倍
★画像挿入【alt:実効レバレッジ2倍のときの追証発生ラインとロスカットライン】
以下の例を説明する図表をお願いします。
取引口座には100万円があり、米ドル/円が100円のときに2万通貨の買いポジションを保有してスタートします。
この取引で証拠金維持率が100%未満となるのは、米ドル/円が52.083円まで下落したときです。
これを解消しないまま、翌営業日のクローズ時点を迎えると、翌営業日のクローズ時点の米ドル/円のレートで強制的に決済が行われることになります。
また、翌営業日のクローズ時点を迎えるまでに証拠金維持率が50%未満になれば、その時点で強制ロスカットが執行されます。
ちなみに、証拠金維持率が50%未満となるのは米ドル/円が51.020円まで下落したときで、このタイミングでの含み損は97万9,600円です。
このポジションが強制的に決済されて損失が確定するので、強制ロスカットが執行された後の取引口座の金額は2万400円となります。
強制ロスカットの条件と実効レバレッジによる影響
6つのケーススタディを見てきましたが、これを踏まえると強制ロスカットの執行条件に関しては、以下の特徴が見えてきます。
- 強制ロスカットが執行される証拠金維持率が高いと、強制ロスカットが執行されやすくなるが、執行時の損失は小さくなる
- 強制ロスカットが執行される証拠金維持率が低いと、強制ロスカットが執行されにくくなるが、執行時の損失は大きくなる
また、実効レバレッジに関しては、以下の特徴があることが分かります。
- 高い実効レバレッジで取引をスタートすると、強制ロスカットが執行されやすくなるが、執行時の損失は小さくなる
- 低い実効レバレッジで取引をスタートすると、強制ロスカットが執行されにくくなるが、執行時の損失は大きくなる
- 一定以上実効レバレッジを低くした取引では、強制ロスカットされる可能性を極めて低くできる(実効レバレッジが1倍以下の取引の場合、強制ロスカットされることは理論上ありません)
取引を行う際には、どれだけ逆行されたときにロスカットルールにかかるのか、ロスカットラインを頭に入れておくことが大切です。
ご自身が利用しているFX会社のロスカットルールをチェックした上で、上記の特徴も踏まえながら、自分に合った実効レバレッジで取引を行うことをおすすめします。
また、ケーススタディはあくまで目安の数値ですが、条件によってロスカットラインがどう変わるのかを把握する際の、参考数値として見ていただければと思います。
強制ロスカットの注意点、懸念点
強制ロスカットは、資金がマイナスとなるのを防ぐためのセーフティシステムですが、以下の点には注意しておきたいところです。
- 資金がマイナスになるのを完全には防げない
- 強制ロスカットにかかる前に決済しておくべき
では、それぞれの内容について、詳細に見ていきましょう。
資金がマイナスになるのを完全には防げない
強制ロスカットでは、ロスカットラインで決済をすることを想定していますが、必ずしもロスカットラインで決済されることまでは保証されていません。
そのため、レートが飛んでしまった場合など、ロスカットラインよりも不利なレートで決済されることがあります。
★画像挿入【alt:レートが飛んだときの強制ロスカット】
レートが飛んでしまったときに、飛んだ後のレートで決済されて、損失が大きくなってしまうことが伝わるイメージ図をお願いします。また、それによって資金マイナスの可能性があるというニュアンスも伝えてほしいです。
なお、窓が大きく開いたチャートを書いていただいて、その窓の中に“本来の強制ロスカットライン”と、“実際に強制ロスカットされてしまうライン”を明示するようにお願いします。
上図のように、レートがロスカットラインをまたいで飛んでしまった場合、ロスカットラインのレートではなく飛んだ後のレートで強制ロスカットが執行されてしまいます。
このような場合、セキュリティシステムである強制ロスカットが突破されてしまうため、際限なく損失が膨らむ可能性があります。
もしレートが大きく飛んでしまった場合には、資金がマイナスになる可能性も出てくるわけです。
特に注意したいのが、以下のようなケースです。
- 週末持ち越しをした
- パニック相場になった
FXでは基本的に土曜日の早朝に取引がいったん終了し、月曜日の早朝に再開します。
この取引がクローズしている間に何か状況の変化があれば、終了時のレートから大きく乖離したレートで取引が再開されてしまいます。
また、経済指標やイベント、フラッシュクラッシュなどによって、相場がパニック状態になったときには、取引時間中であってもレートが飛ぶことがあります。
このようなレートが飛ぶ現象が高い実効レバレッジをかけた取引をしている中で起こると、想定以上の大きな損失が発生してしまいます。場合によっては、資金がマイナスとなることもあるでしょう。
レートが飛ぶ状況を全て回避するのは難しいですが、週末や経済指標のタイミングは決まっているので十分回避できます。
少なくとも週末や経済指標については、高い実効レバレッジのまま持ち越さないようにしておきたいところです。
強制ロスカットにかかる前に決済するべき
★画像挿入【alt:ロスカットラインにかかる前に損切り】
ロスカットで大きな損失となる前に、自ら逆指を入れるなどで決済して損失を小さくすべき、ということが伝わるイメージ図をお願いします。
強制ロスカットはあくまで最終的なセーフティシステムであり、強制ロスカットされないようにトレードを行うのが基本です。
ケーススタディを見ても分かる通り、強制ロスカットが執行された場合には資金の何十%以上も失ってしまうことになります。
これを取り返すのは、かなり大変です。
例えば、100万円の資金のうち50%の50万円を失ってしまった場合を考えてみましょう。
100万円に戻すためには50万円の利益をあげる必要があるわけですが、50万円の資金で50万円の利益をあげるとなると、100%の利益率を出さなければいけなくなります。
もともとの100万円の資金で50万円の利益をあげるのであれば、50%の利益率で良かったところが、倍の利益率が必要になるということです。
このように、大きな損失を出した後にそれを取り返すのは、ハードルが高くなりやすいわけです。
ロスカットラインよりも手前に逆指値を置くなどして、想定外の相場となったときには早めに損切りできるようにしておいた方がいいかもしれません。
国内FXにおけるレバレッジ規制の歴史
★画像挿入【alt:FXのレバレッジ規制の流れ】
1998年にFXがスタートして、2010年に50倍のレバレッジ規制、2011年に25倍となった歴史を図表化してください。できれば2017年に10倍となる話題が出たこと、今後どうなるか分からないニュアンスも出してほしいです。
FXは1998年の法律改正に伴い誕生しましたが、当初はレバレッジの規制がなく、最大400倍といった極めて高いレバレッジも可能でした。
しかし、あまりの高いレバレッジにより、FX会社もトレーダーも高いリスクを負うことになり、トラブルが続出します。
当時はかなりカオスな状況でしたが、その後は改正が繰り返され、FX業界は健全化されていくことになります。
そんな流れの中で、2010年にレバレッジを最大50倍に規制する通達が出されます。
さらに2011年にはレバレッジは最大25倍に規制されました。
このような形で、国内FXはレバレッジ規制がどんどん強くなっている流れにあります。
また、2017年には、金融庁がレバレッジを最大10倍以下に規制しようと検討していることが話題になりました。
これはいったん見送りになりましたが、今後もレバレッジ規制の動向については気になるところです。
いずれにせよ、レバレッジをかけ過ぎたトレードはリスクが大きいため、安全に資金を守ることを心がけながらトレードを進めていくことが大事と言えるでしょう。
豆知識
最後に、レバレッジや強制ロスカットに関する豆知識をいくつか紹介しておきます。
海外FXにおけるゼロカットシステム
★画像挿入【alt:ゼロカットシステム】
資金を超える損失が発生しても、資金がマイナスにならないシステムだということが伝わるイメージ図をお願いします。ただ、その裏で、そのマイナス分はFX会社側の負担となっているというニュアンスも出してほしいです。
国内のFX会社と違い、海外のFX会社では資金がマイナスにならない「ゼロカットシステム」を採用しているところがあります。
海外のFX会社では日本よりも大幅に高く最大レバレッジが設定されており、相場が変動した場合には資金がマイナスになる可能性が高い状況にあります。
このリスクを抑えるために用意されているのが、ゼロカットシステムというわけです。
これを聞くと非常に魅力的に聞こえるかもしれませんが、いくつか注意したいことがあります。
ゼロカットシステムはトレーダーの損失をFX会社が肩代わりする仕組みであり、FX会社にとっては非常にリスクの大きいところがあります。
もし急激な相場変動により多数の資金マイナスが発生した場合には、FX会社は大きな損失を抱えることになるからです。
こういったことが起こると、FX会社が倒産してしまうことも十分に考えられるでしょう。
また、日本のFX会社の場合、トレーダーの資産とFX会社の資産が分別管理しなければならないことになっていますが、海外のFX会社は分別管理されていない可能性もあります。
もし分別管理されていなかったとすると、FX会社が倒産してしまえば、トレーダーの取引口座にある資金は出金することができなくなるはずです。
海外のFX会社を利用する場合には、こういったケースも想定してしっかり信頼性を確認しておくことが大切です。
ただ、なかなか情報が得られにくいこともあり、特に初心者のうちは、信頼性の高い国内のFX会社を利用する方が無難と言えます。
国内FXの必要証拠金の決まり方
★画像挿入【alt:必要証拠金の決まり方】
金融庁が「4%以上にしなさい」と指示を出して、FX会社が「できるだけ安い金額にしよう」と必要証拠金を定めているようなイメージ図をお願いします。
現在、国内FXのレバレッジは上限25倍となっています。
これは、金融庁が必要証拠金を取引金額の4%以上とするように規制をかけており、これに従って各FX会社が必要証拠金をいくらにするかを設定しているという形です。
この必要証拠金を取引金額の何%以上にするかという値が変われば、レバレッジの上限も変わっていきます。
なお、FX会社が設定する必要証拠金は取引金額の4%以上であれば問題ないので、4%以上に設定していることもあります。
例えば、レバレッジ10倍のサービスを提供している場合には、必要証拠金は取引金額の10%となるようにFX会社が決めているはずです。
その他にも、相場が非常に不安定な状況にある通貨については、FX会社が一時的に必要証拠金の金額を引き上げる措置を行うこともあります。
FXにおいて必要証拠金は非常に重要な位置付けにあるので、自分が利用しているFX会社はどういう形で決めているのか、意識してみるといいかもしれません。
参考リンク:金融庁「外国為替証拠金取引について」
用語
- 強制ロスカット
- 最大レバレッジ
- 実効レバレッジ
- 証拠金取引
- ポジション
- 決済
- 必要証拠金
- 取引必要証拠金
- ポジション必要証拠金
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- 預託証拠金残高
- 有効証拠金
- 資産評価額
- 資産合計
- 時価評価総額
- 追加証拠金
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- ロスカットライン
- 週末持ち越し
- 経済指標
- フラッシュクラッシュ
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