ダウ理論(6つの基本法則)テクニカル分析の源流
公開日:2021年6月17日 更新日:2022年3月25日

要するにダウ理論とは
- テクニカル分析の源流となる古典的相場理論
- ダウ理論のベースにあるのは「トレンドは継続する」という考え方
- ダウ理論を理解することで相場の環境認識が行いやすくなる
目次
ダウ理論の概要
ダウ理論は、19世紀後半に米国の金融ジャーナリストであるチャールズ・ダウによって構築された相場理論です。
テクニカル分析の元祖とも言えるような存在であり、その後に考案されるテクニカル分析にも大きな影響を与えました。
100年以上も前の古い相場理論ですが、現代の相場においても問題なく使用することができまです。
むしろダウ理論は相場におけるある種の“常識”のような位置付けであるため、トレードをするのであれば頭に入れておく必要があります。
ダウ理論は、チャートを見るうえでの共通言語とも言えます。
共通言語を理解できなければ、他の市場参加者が相場をどういう目線で見ているかが分からないため、トレードをする上でのハンデとなってしまうでしょう。
なお、ダウ理論が考案された時代と現代では相場環境が大きく異なるため、そのまま適用することができない部分もあります。
そのため、相場の基本としてダウ理論を理解した上で、それを柔軟に応用できるようになることが大切です。
ダウ理論を構成する6つの基本原則
ダウ理論は、以下の6つの基本原則から構成されています。
- 平均は全ての事象を織り込む
- トレンドには3種類ある
- 主要トレンドは3段階からなる
- 平均は相互に確認されなければならない
- トレンドは出来高でも確認されなければならない
- トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
なお、いずれの考え方も重要ですが、特にトレードにおいて活用しやすく実戦的なのは、6つ目の「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」です。
また、これにも深く関係しますが、ダウ理論におけるトレンドの定義は相場を見る際の基本中の基本なので、しっかり押さえておくことをおすすめします。
では、6つの基本原則をそれぞれ詳細に見ていきましょう。
平均(価格)は全ての事象を織り込む
この基本原則は、「全ての関連情報を踏まえた上で、市場における価格は形成されている」ということを意味しています。
そのため、将来の相場の転換を予想する際には、基本的には価格の推移を示しているチャートだけを見ていれば十分と考えられ、この基本原則はチャート分析の重要性を示す理論的な根拠にもなっています。
価格は市場参加者の需給によって最終的には決まりますが、彼らは国の政策、経済状況を示す様々な経済指標などのファンダメンタルズを踏まえた上で売りか買いかを決めています。
このファンダメンタルズを精緻に分析して将来を予測する、という考え方ももちろんあるでしょう。
しかし、チャートにはそれらの情報が全て反映されているため、チャート分析することでファンダメンタルズについても十分に考慮できるというわけです。
相場においては、例えば経済指標が良い結果だったのに価格が下落するといった形で、ファンダメンタルズから考えられる動きと一見相反するような動きになることも多々あります。
もちろんファンダメンタルズに関する知識も大切ですが、それに固執し過ぎることなく、チャートから市場の需給バランスを読み取り将来を予測することが大切と、ダウ理論では考えるわけです。
トレンドには3種類ある
ダウ理論においては、相場に上昇あるいは下落という明確な方向性が見られる「トレンド」という概念が非常に大切です。
ここで、ダウ理論が言うトレンドとは何かについて、まず確認しておきましょう。
トレンドの定義
ダウ理論では、トレンドを以下のように定義しています。

上の画像は、上昇トレンドと下落トレンドのチャートの形状を示したのです。
この条件を言葉で整理すると、次の表のようになります。
方向 | 条件 |
上昇トレンド | 上値と下値がともに切り上がっている。 |
下落トレンド | 上値と下値がともに切り下がっている。 |
つまり、相場の上下動における上値と下値に注目し、ともに切り上がっていれば上昇トレンド、ともに切り下がっていれば下落トレンドという形です。
なお、これらに当てはまらない状況については、トレンドレスと考えるといいでしょう。(先行期や利食い期に見られやすいとされるラインも、これに当てはまるでしょう。)
この定義は非常に有名であり、世界中の投資家が意識しているポイントです。
そのため、例えば上昇トレンドが発生している際には、前回の上値や下値を抜けるかどうかによって今後の見方が変わってくるため、相場に激しい攻防が起こることがあります。
3種類のトレンド
このトレンドについて、ダウ理論ではそのサイクルの長さから以下の3種類に分類して捉えています。
- 1年から数年にわたる主要トレンド
- 3週間から3ヶ月続く二次トレンド
- 3週間未満の小トレンド
これを図示すると、以下の画像のようになります。

まず全体的な流れである主要トレンド(赤矢印)があり、その中に二次トレンド(青矢印)、さらに小トレンド(緑矢印)があります。
二次トレンドは主要トレンドの調整局面であり、それまで上昇や下落から1/3~2/3程度の逆行が起こるとされています。
小トレンドは、この二次トレンドよりもさらに細かいトレンドです。
トレードにおいては、主要トレンドに乗っていくのが基本ですが、いくら方向が合っていても、タイミングが悪ければ二次トレンドによる逆行によって、大きく含み損が膨らむことがあるため注意が必要です。
最も狙い目となるのは、二次トレンドが終了して、再度主要トレンドの方向に相場が伸びるタイミングでしょう。なお、この二次トレンドの終了・主要トレンドの再開を判断する際には、小トレンドの発生状況が参考になります。
ここでしっかり理解しておきたいのは、相場のトレンドはこのような主要トレンド・二次トレンド・小トレンドが複合的に絡み合って形成されているという感覚です。
なお、ダウ理論では、ベースとなる主要トレンドはとして1年以上のサイクルとなるものを想定しています。これは、日足以上で確認できるようなトレンドというのが大まかなサイズ感でしょうか。
ただし、必ずしも主要トレンドを日足以上で確認しないといけないというわけではなく、ご自身の取引スパンや取引対象の特徴に合わせて、柔軟に主要トレンドを設定してもいいでしょう。
自分が狙う主要トレンドを設定した上で、その中のトレンドを分解して理解していくという流れが、この基本原則から学べる大切なことと言えるかもしれません。
主要トレンドは3段階からなる
トレンドの種類について触れましたが、この中で最も大きな流れである主要トレンドの発生から終了までの推移を、ダウ理論では以下のように3段階に分類しています。

上の画像のように、3段階はそれぞれ「先行期」「追随期」「利食い期」と呼びます。
価格の推移を見てみると、先行期では低いところを推移しており、追随期に大きく上昇し、利食い期に伸び悩むという形です。
これをより詳細に整理すると、以下の表のようになります。
段階 | 内容 |
先行期 | 一部の優れた投資家が、他の投資家に先駆けてポジションを構築している段階。この段階では、相場に明確なトレンドは発生していない。 |
追随期 | 相場に明確なトレンドが発生し始め、これに追随する形で勝つ投資家がポジションを持つ段階。先行期に動いていた投資家も、さらにポジションを増やしていく。 |
利食い期 | 相場は大きく上昇しており、先行期・追随期でポジションを構築した投資家が利食いを行う段階。相場には期待感が膨らんでおり一般投資家(負ける投資家)がポジションを持ち始めるが、新たにエントリーする人がいなくなればトレンドは終わることになる。 |
このように、主要トレンドは先行期→追随期→利食い期という流れで進んでいきますが、このうち先行期と追随期でポジションを持った投資家は勝つことができます。
一方、利食い期においては彼らが手放したポジションを買わされる一般投資家は、最終的に負けていくことになるでしょう。
トレードではトレンドに乗ることが基本ですが、そのトレンドがどの段階にあるのかを認識した上で乗ることが、勝つためには欠かせません。
なお、先行期にポジションを持つのが理想的ではありますが、それを成功させるのは難易度が非常に高いと考えられます。
そのため、最もトレードに適したタイミングは、明確なトレンドが発生し始める追随期と言えるでしょう。
トレードでは、トレンドの最初から最後まで全てを取る必要はなく、勝ちやすいところだけで勝負をすればいいわけです。
ライン形態(横ばいの相場)について

上の画像は、相場ではしばしば見られる明確な方向性が見られない横ばい相場を、ダウ理論がどのように捉えているかを示したものです。
この画像にもあるように、ダウ理論では横ばいの相場を「ライン」という言葉で定義しており、トレンド発生時にはそれを上放れ、下放れしていくというのが大まかなイメージです。
このラインという形態は、先行期や利食い期においてよく見られるほか、追随期における調整段階においても発生すると考えられています。
また、ラインの状態が長く続けば続くほど、ラインから上放れ、下放れした際の伸びは長く続くとされています。
このラインに注目することで、取引に適したタイミングが来ることを見極められることがあるかもしれません。
例えば、先行期においてラインが発生している場合には、そのラインを抜けるところから追随期が始まる可能性が高いと言えるでしょう。
この他、追随期における調整段階としてラインが発生している場合にも、このラインを抜けるところから大きな上昇、下落が発生し、方向性が現れると予測することができるわけです。
ラインは今で言うところのボックス相場やレンジ相場に当たりますが、そういった見方はダウ理論から生まれたのかもしれません。
ちなみに、こういった見方は、フォーメーション分析における反転や継続のチャートパターンにも通ずるところがあります。興味のある人は、以下の記事もぜひチェックしてみてください。
平均(価格)は相互に確認されなければならない
この基本原則における「相互に」とは、ダウ平均株価における工業株と輸送株のことを指しています。
これを踏まえて分かりやすく言い換えると、「本物のトレンドが発生しているのなら、工業株と輸送株の両方にトレンドが確認されるはずだ」ということです。
なぜなら、工業株が上昇するということは工業製品の売上が増えたということであり、それを運ぶ輸送会社の売上も増えるはずだからです。
そのため、トレンドに乗ったトレードを行おうとするのであれば、そのトレンドが本物かどうかを判断するために工業株と輸送株の両方を確認しておくことが大切になるというわけです。
この基本原則が言及しているのは工業株と輸送株についてであり、これをそのまま利用できる対象は非常に限定されます。
しかし、「相関性のある複数の市場において、トレンドの発生を確認する必要がある」という形で理解すれば、様々なところで柔軟に応用できる基本原則です。
トレード対象と相関性の高いものを把握した上で、そのチャートも併せて確認することによって、ダマシに遭う確率を抑えることができるでしょう。
トレンドは出来高でも確認されなければならない
この基本原則は、「本物のトレンドが発生した場合には、同時に出来高も増加する」ということを意味しています。
そのため、チャートの形を見てトレンドの発生を確認するだけでなく、出来高が増加していることを確認することが大切です。
逆に言うと、大きな動きが発生したとしても出来高が増えていない場合、そのトレンドに見える動きに乗ろうとすると、ダマシとなる可能性が高いと言えるでしょう。
出来高が発生しない中で大きく動くケースとしては、例えば薄商いの状況が考えられます。こういった状況においては、少しの注文でも大きな上昇が起こりやすくなっています。
この点、本格的なトレンドにおいては、必ずたくさんの投資家による注文が入ります。これによって、出来高が大きく増えるわけです。
もし薄商いの中で一時的な上昇が起こったとしても、ポジションを持ちたいと考えている投資家が多いわけではありません。
そのため、その後も注文が入り続ける可能性は低く、トレンドが長続きすることは考えにくいわけです。
トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
最後に紹介する基本原則は、「トレンドが発生すると、明確な転換シグナルが起こるまで相場は伸び続ける」というものです。
つまり、トレンドが発生した場合はトレンド方向に目線を持ち、明確な転換シグナルが起こるまでその目線を続けることが大切だというわけです。
そして、このトレンドの転換ですが、トレンドの定義を踏まえてトレンドの方向性が逆転することを指します。
例えば、上値と下値をともに切り下がっている状態(下落トレンド)が、上値と下値がともに切り上がっている状態(上昇トレンド)に変わるなど、状態が逆転したタイミングで転換シグナルが発生したことになります。
トレンドの転換は、細かく見ると2パターンあります。下落トレンドから上昇トレンドへの転換を例にして、それぞれ見ていきましょう。
フェイラースイング

1つ目は上の画像のようなパターンで、「フェイラースイング」と呼ばれます。
「C」で「A」の下値を更新できずに上昇へと転じ、「B」の上値を切り上げるという流れです。
この場合、「B」の水準を上にブレイクしたタイミングで、転換シグナルが発生したことになります。
ノンフェイラースイング

2つ目は上の画像のようなパターンで、「ノンフェイラースイング」と呼ばれます。
「C」で下値を更新後に上昇へと転じ、そのまま「B」の上値を切り上げて「D」まで上昇し、「E」で下値を切り上げて上昇していくという流れです。
この場合、「A→B」において前回上値の水準を上にブレイクしたタイミングで、下落トレンドの定義が崩れたことになりますが、まだ転換シグナルが発生したことにはなりません。
転換シグナルが完成するのは、「B」の水準を上にブレイクして、「A→C」と「B→D」の切り上げが確定したタイミングです。
なお、上昇トレンドから下落トレンドへの転換については、同様の形で上下を逆にして考えるといいでしょう。
ダウ理論に基づくトレードの考え方
ダウ理論の基本原則について解説してきたので、これを実際の取引に適用するにあたっての考え方についても紹介していきます。
取引手法にダウ理論を取り入れる際の、一つの参考にしていただければと思います。
主要トレンドの発生状況を確認する
ダウ理論をベースにトレードを行う場合、発生したトレンドに乗って転換シグナルが出るまでホールドするというのが基本姿勢となります。
この形のトレードは乗ったトレンドがすぐに終わってしまうと機能しないので、しっかり継続する本物のトレンドを見極めることが大切です。
そのために第一にやるべきなのが、トレンドの定義に基づいて主要トレンドの発生を確認することです。
その上で、以下の2点についてもチェックしておくのが望ましいでしょう。
- 相関性のある他の市場でもトレンドが発生しているか
- 出来高も増加しているか
また、トレードを行うのに適したタイミングは、3段階あるうちの明確なトレンドの形が現れやすい追随期です。
現状の相場がどの段階にあるのかについても、併せて意識しておきたいところです。
ライン形態など、先行期の可能性を示唆する状況を把握した上で、追随期へ移行するタイミングをできるだけ早く捉えるようにしましょう。
では、こういった相場の環境認識を通して主要トレンドを見極めた後、具体的にどういったタイミングで取引するのかについて見ていきましょう。
二次トレンドの転換が狙い目

上の画像は、ダウ理論をベースとしたとき、トレードにおける狙い目がどこになるのかを示したものです。
ダウ理論ではトレンドを主要トレンドと二次トレンド、小トレンドの3種類に分類しますが、取引の目線は大きな流れである主要トレンド(赤矢印)の方向に持っておきます。
この主要トレンドの中で、逆方向に調整する二次トレンドが起こるはずですが、この二次トレンドが転換して再び主要トレンドの方向のトレンドが発生するタイミング(緑丸)が、取引の狙い目です。
このタイミングを狙う理由には、以下の3つがあります。
- 主要トレンドの方向に動き始めたことにより、トレンドが継続する可能性が高い
- トレンドが継続した場合、利益幅を伸ばしやすい
- 想定通りの相場展開にならなかった場合の損失幅を抑えやすい
いわゆる押し目買いや戻り売りと言われる取引手法を、ダウ理論に基づいて実践している形です。
このように、最初に相場全体の環境を把握して、どの動きを狙うのかを明確にしておくことが大切です。
小トレンドを見て転換シグナルを確認する
トレードの狙い目を見つけた後、最終的なトレードの判断では小トレンドに注目します。
では、エントリーからエグジットまでの判断について、より詳細に見ていきましょう。
エントリーの判断

二次トレンドの転換については、小トレンドを見て確認を行います。
例えば上の画像のように、主要トレンドが上昇トレンド、二次トレンドが下落トレンドであったとしましょう。
この場合、二次トレンドが発生している間は、小トレンドでは上値と下値の切り下げが続く状態が確認されます。
この流れが崩れ、小トレンドにおいて上値と下値の切り上がることが確定するところ(上の画像における「買い」の部分)が、エントリータイミングです。
利益確定の判断

想定通りに上昇が続いた場合の利益確定については、次に二次トレンドが発生したところ(上の画像における「売り」)がいいでしょう。
つまり、小トレンドに注目して、上値と下値の切り下げが発生するタイミングです。
なお、より大きく利益を伸ばすというのであれば、主要トレンドが終了するタイミングまでホールドするという形も考えられます。
ただし、想定通りに主要トレンドが続いたとしても、二次トレンドによる逆行の間もポジションを持ち続けることになり、時間や効率を考えるとマイナス面も少なくないかもしれません。
損切りラインの設定

なお、想定通りに相場が推移しないことも考えられるため、どこで損切りを行うかについてもあらかじめ決めておく方が賢明です。
今回は、二次の下降トレンドの転換で買いでエントリーしており、その後の上昇トレンドが終了したときが、売り(エグジット)のタイミングです。
しかし、この上昇トレンドが伸びず、すぐに二次トレンドの直近安値を割ってしまってトレンドが終わるケースもあるでしょう。
そのようなケースでは、想定していた展開から外れポジションを保有している根拠が崩れるため、損切りの売りをいれるのが賢明でしょう。
つまり、このときに速やかに損切りできるように、現状の二次トレンドの直近安値(青丸)の下に損切りライン(画像の赤実線)を設定するというのが一つの方法です。
なお、こちらについても、主要トレンドが崩れるタイミングまで待つという考え方もあるかもしれません。(これは最終防衛ラインになるので、それ以上粘るのはダメです。)
利益確定や損切りについては、ご自身のトレード方針も踏まえながらある程度柔軟に考えていただければと思います。
ダウ理論に基づく取引シミュレーション
ここで、実際のチャートをダウ理論を通して見ていきましょう。

上の画像は、米ドル/円の日足チャートです。まずはこの日足チャートを見ながら、相場の大きな流れを確認していきましょう。
「A」までは上値と下値が切り下がる下落トレンドとなっていますが、「B」のところで上値を切り上げており、下落トレンドが崩れる形になっています。
その後、「C」で下値が切り上がり、「B」の水準を上抜けした「D」で転換シグナルが発生、上昇トレンドが確認できました。
この上昇トレンドを主要トレンドとみなすと、ここからは基本的に買い目線での取引タイミングをうかがうことになります。
調整の二次トレンドが終了するタイミング(白い点線の丸)が、取引における狙い目となります。
では、最初に二次トレンドが発生するEの部分を拡大して、1時間足でより細かく見ていきましょう。

上の画像は、先ほどの「E」の前半を拡大したチャートです。
上昇が続く中、「F」が高値となり、次の上値の「H」で高値更新が失敗となります。
そのまま、前回下値「G」の水準を下抜けしたIのところで、二次トレンドである調整の下落トレンドが発生しました。
この二次トレンドにおいて転換シグナルが発生し、主要トレンドと同方向に相場が動き出すタイミングを狙っていくことになります。
まず、「L」のところで前回下値Jを割り込まず、下値切り上げが起こります。
この状態で、前回上値Kの水準を上抜けすれば上昇トレンドが発生し転換シグナルとなりますが、これが起こった「M」のタイミングで買いエントリーします。
損切りラインについては、「J」の下に設定しておきましょう。

上の画像は、「E」の後半を拡大したチャート(1つ前の画像の続き)です。
「M」で買いエントリー後、相場は順調に上昇していきます。
「N」のところで前回下値を下回り、いったん上昇トレンドが崩れる局面があります。
仮にこの後、前回上値を上抜けできないまま「N」の水準を下抜けすると、転換シグナルの発生となり、そこで利益確定の売りを入れることになったでしょう。
しかし、そういった展開にはならず、前回上値を上抜けしているので、ポジションはそのままホールドすることになります。
最終的に転換シグナルが出たのは「R」のところで、利益確定の売りを入れる形になりました。
エグジットの考え方について
最初の全体チャートに戻ってみると、結果的には利益確定したところよりも大きく上に伸びる形となっています。
その後についても、1つ目の画像(大きな流れのチャート)における白い点線丸で同様の目線で取引を行うことで、利益をあげるチャンスが続く相場と言えるでしょう。
なお、主要トレンドのレベルで転換シグナルが出るまでホールドし続ける、という考え方もあると思います。
その場合は、2つ目の画像における「J」の下に損切りラインを設定するのはバランスが悪いので、主要トレンドが崩れることになる1つ目の画像における「C」の下に損切りラインを設定するといいかもしれません。
これには、どちらのやり方が正しいというのはないと考えられます。
状況によって根拠のないまま判断がブレてしまうことなく、毎回一貫したトレード戦略を選択できることが大切と言えるでしょう。
ダウ理論の注意点、懸念点
ダウ理論は相場の状況を把握する上で有用な考え方ですが、それだけでトレードをしようとするとうまくいかないこともあります。
ここでは、ダウ理論を利用する際の注意点についてもいくつか触れておこうと思います。
トレンド終了時には必ず負ける
ダウ理論では、トレンドは転換シグナルが発生するまで継続するという前提のもと、トレンドに最後まで乗り続けるのが基本です。
しかしながら、トレンドが永遠に続くことはないため、いつか必ずトレンドは転換します。
そういった局面でトレンド継続を前提に取引を行うと、トレンドの転換によって負けてしまうことになります。
しかし、相場において常に勝ち続けるのは無理であるため、ある意味でこれは必要な負けとも言えるでしょう。
トレードを重ねる中で、こういった負けも含めて全体として「利益>損失」となるようにすることが大切です。
そのためには、リスクリワードレシオ(利益値幅÷損切り値幅)ができるだけ高くなるような形で、トレード戦略を設定することを心がけるようにしましょう。
取引タイミングがやや遅いところがある
ダウ理論では、基本的に前回上値・下値のブレイクを基準にエントリーやエグジットを行うことになります。
しかし、この考え方だと、反転をしっかりと確認してからの取引になるため、値幅的に無駄が大きくなることも考えられます。
この点、取引タイミングの判断を行うに当たっては、必ずしもダウ理論だけにこだわる必要は全くありません。
ダウ理論はテクニカル分析の元祖であり、それをベースにして様々なテクニカル分析が考案されてきたわけです。
こういった経緯を踏まえると、ダウ理論による分析をベースにしつつ他の分析手法を併用するというのは、非常に理にかなった方法と言えるでしょう。
ダウ理論は、細かい取引タイミングを捉えるというよりも、相場の環境認識を行う際に欠かせない考え方です。
ダウ理論をベースに環境認識をした上で他のテクニカル分析を使用することで、より良い取引タイミングを見つけられることが多々あるはずです。
上値・下値の判断が曖昧になりやすい
ダウ理論において重要なトレンドを判定する際には、上値・下値に注目して判断を行うことになります。
そして、この上値・下値をどこと考えるかによって、相場の見方が変わることもあります。
しかし、チャートのどの部分を上値・下値とするかは基準が曖昧なところがあり、判断がブレやすいところでもあります。
一貫性のある取引をするためには、できる限りブレを少なくすることが欠かせないと言えるでしょう。
たくさんのチャートを見て経験を積むことで、ダウ理論を使いこなせるようになっていただければと思います。
ダウ理論の成り立ち
考案者
チャールズ・ヘンリー・ダウ(Charles Henry Dow)
歴史
1882年にチャールズ・ダウはダウ・ジョーンズ社を設立し、経済ニュースレターをウォール街で配布するようになります。
これが評判となり、1889年には『ウォール・ストリート・ジャーナル』を発刊するに至りました。
同紙の社説の中で、ダウは相場に関する論説を発表していきました。
なお、彼自身はダウ理論に関する著作を残していません。
1902年にダウが死去した後に彼の論説がとりまとめられ、ダウ理論として知られるようになりました。
豆知識
ダウ理論ではトレンドが非常に重要な意味を持ちますが、その発生状況を見る際には上値と下値に注目することになります。
しかし、注意点のところで触れた通り、慣れないうちはチャートを見ても、どこを上値や下値として見ればいいのか判断するのが難しいと感じることも多いでしょう。
また、自分の感覚で頑張って上値や下値の判断すると、その判断基準がブレてしまうこともあるはずです。

この点、「Zig Zag(ジグザグ)」というインジケーターを使うと、上の画像のように、チャート上にジグザク上のライン(白ライン)を自動で描画してくれるため、上値と下値が一目瞭然となります。
その上、一定の基準に基づいて機械的にラインを描画してくれるため、判断基準がブレることもありません。
Zig Zagについては、以下の記事で詳細に解説しています。非常に便利なインジケーターなので、興味のある人はぜひチェックしていただければと思います。
用語
- テクニカル分析
- ファンダメンタルズ分析
- トレンド
- トレンド転換
- 上値、下値
- ブレイク
- ダマシ
- 先行期
- 追随期
- 利食い期
- 出来高
- Zig Zag